【今だからこそ】村上春樹さんの小説を読もう!

くらげのライブラリー

毎年ノーベル文化賞候補者として名前が挙がる、日本を代表する作家、村上春樹さん。
その作品は27か国語に翻訳され、世界中で読まれているほどの世界的大作家です。
(主要外国語大学で学べる全言語で翻訳されている計算になります!)

外国の方で「日本の小説読んだことあるよ!」という方は、大体、村上春樹さんの作品を読んでいます。

日本でも「ハルキスト」という呼び名ができるほど、熱狂的なファンの方がたくさんいます!
かく言う私も、対談集も含めて、村上春樹さんの作品はすべて読んでいて、大好きな作家さんの一人です。

ただその一方で、

気にはなるけど、難しいイメージがあってとっつきにくい。
たくさん作品があって、どれを読めばいいのかわからない。
一度読んでみたけど、挫折してしまった。

という方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、

村上春樹さんの作品を初めて読む方におすすめな作品と、2冊目以降のガイド

をご紹介します!

村上春樹さんの作品を読むと、世界の見え方や感じ方が変わります。
その影響力の強さは、読後に話し方が作品の主人公に似てしまうほど・・・!

今回ご紹介するガイドに沿って読み進めていただければ、作品を読みながら、謎解きや隠れミッキーを探す、的な楽しみ方もできるようになります!

そして、村上春樹さんの作品は何度読んでも新鮮に感じられ、新たな発見があります。
だからこそ、村上春樹さんの作品の作品を読めば、おうち時間が充実するのは勿論のこと、「人生の楽しみが増える」と言っても過言ではありません。

コロナで中々外に出られず、家で一人で過ごす時間も長い今こそ、深淵な世界に踏み出すチャンスです!

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初めの一冊を選ぶポイント

普段の読書傾向を踏まえて、一冊目を大切に選ぶべし!

どの作品から読んでも楽しめる作家さんはたくさんいます。
寧ろその方が一般的かもしれません。

でも村上春樹さんの場合は、まず一冊目がとっても大切
なぜなら、村上春樹さんの作品たちは、必ずしも物語に直接的な繋がりがあるわけではないけれど、有機的に繋がっているから。

村上春樹さんの作品の特徴をいくつかあげると、

  1. 語り口
  2. 世界観
  3. リアリズムと非リアリズムの混在
  4. 複数の世界の物語がそれぞれに語られ、交錯して、一つの厚みのある物語を紡ぎだす手法
  5. 物語を持ったモチーフが様々な作品を横断して現れて、その意味合いを増す

といったものがあります。

これらの要素が、作品を追うごとに発展し、複雑化していくので、突然新しい作品に飛び込むと、困惑したり、分かりにくく感じたり。
それが原因で苦手意識を持つ方も多いのだと思います。

だから、

「一冊目」と「読み進める流れ」

が、村上春樹さんの作品を楽しむためには大切なんです!

そしてその一冊目と読み進める流れは、普段の読書傾向によって、最善が変わってくるもの。

今回は

  1. あまり小説を読まない方
  2. 小説は読むけれど、村上春樹さんの作品は初めての方
  3. ミステリー小説が好きな方
  4. 恋愛小説が好きな方

に読書傾向を分けて、おすすめの一冊目と二冊目以降のガイドをご紹介します。

あまり小説を読まない方:東京奇譚集(短編集)

長編小説のイメージが強い村上春樹さん。
実は、短編にも名作がたくさんあります。

普段小説を読まれない方は、いきなり長編小説を読むのではなく、短編集を読んで、村上春樹さんの小説の世界観を味わってから、長編小説を読まれることをおススメします!

おすすめの流れは、

  1. 『東京奇譚集』
  2. 『螢・納屋を焼く・その他の短編』
  3. 長編小説へ!(次項、「小説は読むけれど、村上春樹さんの作品は初めての方」を参考にしてみてください)

です!

東京奇譚集

発売日:2005年09月16日
出版社:新潮社

収録作品
  • 偶然の旅人
  • ハナレイ・ベイ
  • どこであれそれが見つかりそうな場所で
  • 日々移動する腎臓のかたちをした石
  • 品川猿

5つの短編が収録された短編集。

サーファーの息子を亡くしたシングルマザーが希望を見出す姿を描いている『ハナレイ・ベイ』は吉田羊さん主演で映画化されていますし、「品川猿」には今年発売された最新短編集『一人称単数』にも登場する「人と話せる猿」が出てきていたり、知名度の高い短編集でもあります。

不可思議で少しあやしくてありそうにない、でもどこかで起こっていそうな話が、「奇譚集」という名前でまとめられています。

短編であることや、設定が分かりやすいことから、とても読みやすい。
それでいて、村上春樹さん特有の世界観やテンポ感が味わえる、最初の一冊におすすめな珠玉の短編集です。

螢・納屋を焼く・その他の短編

発売日:1984年7月5日
出版社:新潮社

収録作品
  • 納屋を焼く
  • 踊る小人
  • めくらやなぎと眠る女
  • 三つのドイツ幻想

村上春樹さんワールド全開の短編集。

『蛍』は、ノルウェーの森の原型となった作品と言われていますし、『めくらやなぎと眠る女』も、ノルウェーの森の三人の登場人物を連想する方が多く、個人的に『踊る小人』には『IQ84』のリトルピープルを連想する、など、この収録作品は、村上春樹さんのその後の作品にも色濃く影響を与えている重要な作品ばかりです。

そんな、のちの名作たちの原要素となっている、コンパクトで美しく、そしてとっても「村上春樹さん的」な素晴らしい短編が詰まっている短編集。

一冊目で村上春樹さんの文体になれた方におすすめする、読みやすく、且つ村上春樹さんの世界観にどっぷりと浸かれる一冊です。

小説を読まれる方:風の歌を聴け

普段から小説を読まれる方、本好きだという自負のある方は、初期の作品から読むことをおすすめします!
具体的には、

  1. 風の歌を聴け
  2. 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
  3. 海辺のカフカ

の順番で読むと、青いながらも今後の発展と確かな力量を感じる処女作→初期の集大成的傑作→深みのあるストーリーで心に訴える作品、と、世界観や完成度が発展していく流れを追えて分かりやすく、村上春樹さんという作家に対して愛着が湧いてくることと思います。

『風の歌を聴け』を読んで、「この続編が気になる!」と思った方は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の前に、

  1. 『羊をめぐる冒険』
  2. 『1973年のピンボール』
  3. 『ダンス、ダンス、ダンス』

を読んでみるといいと思います!
実は、『風の歌を聴け』は、初期の長編小説の「羊(鼠)三部作(四部作)」と言われるものの第一作目。
この全三部作(四部作)を読むことで、「羊」をはじめ、村上春樹さんの作品の中で重要なモチーフの原イメージをもつことができて、その後読む作品をより深く楽しめます!

風の歌を聴け

発売日:1979年7月23日
出版社:講談社
文庫:168ページ

村上春樹さんのデビュー作で、第22回群像新人文学賞受賞、芥川賞と野間文芸新人賞候補にもなった作品。

当時、村上春樹さんは千駄ヶ谷のジャズバーのオーナーをしていました。
そんなこともあってか、物語にも重要な場所としてジャズバーやレコード屋さんが登場します。

村上春樹さん独特の語り口や雰囲気は既にあるのですが、ストーリーもわかりやすく、テンポもよく、すらすらと読めます。

処女作ということで物語の緻密さだとか、奥深さ、というものは後の作品には及びませんが、そんな青さも尊く感じられる、爽やかさな作品です。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

発売日:1985年6月15日
出版社:新潮社
文庫:上下二巻

前述の「羊三部作」の後に書かれた、4作目の長編小説。

心を失った穏やかな「世界の終り」、善意も悪意も安全も危険もある「ハードボイルド・ワンダーランド」。

この、「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」という二つの世界の話が交互に出てきて、次第に一つの物語として繋がっていくのが、面白く、美しい作品です。

「全作品の中でもこれが一番好き!」という方も多く、村上春樹さんの評価を決定的にした傑作です。

海辺のカフカ

発売日:2002年9月12日
出版社:新潮社
文庫:上下二巻

15歳の少年「僕」が主人公の章と、識別障害と半分しかない影を持つ老人「ナカタ」が主人公の章が交互に出てきて、それが次第にリンクしていきます。

それぞれに何かを失いそこから逃げた二人が、もう一つの世界との不思議な交流の中で、前に進むお話し。

人の心で生まれるもの、その力。
刻々と進む時間と、そこに在るものの儚さと、だからこそ感じる「記憶」の尊さ。

そんなことを考えさせられます。

ミステリー小説好きな方:羊をめぐる冒険

発売日:1982年10月13日
出版社:講談社
文庫:上下二巻

前述した「羊三部作」の第三作目。

オーナーをしていたジャズバーを手放して、専業作家としての第一作目であり、規模も完成度も前作まで(『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』)から大きく飛躍しています。

主人公の友人である「鼠」が送ってきた写真に写り込んでいた一匹の「羊」。

実はその羊は、様々な人間の中に入ったり出たりして、たくさんの人間の運命を翻弄している存在。

何も知らない広告マンの主人公が、何の気なしにその写真をポスターに採用したことから、その荒唐無稽な羊をめぐる冒険を課される、というお話し。

多くの伏線や、謎解きの要素があり、ミステリー小説好きの方におすすめの一冊です!

恋愛小説好きな方:ノルウェイの森

発売日:1987年9月4日
出版社:講談社
文庫:上下二巻

村上春樹さん作品の中でも、特に有名な作品です。

ただ、村上春樹さんの作品の中ではかなり異色で、完全なリアリズム小説。

「生死」や「性」について、とても生々しく描かれています。
それでも、村上春樹さん独特の語り口や空気感のお陰で、重々しくはならず、どこか幻想的な雰囲気を残しています。

様々な恋愛や人間関係を通して、「傷つき、傷つける」ことを経験し、気付いていく。

そんな自分自身と向き合いながら、じんわりと味わいたい作品。

ザ・恋愛小説ではありませんが、恋愛小説として読むことで、入りやすくなると思います!

※おすすめの恋愛小説をもっと知りたい方は、こちらのリンクをどうぞ!
【キュンと切ない】おすすめ恋愛小説4選!

まとめ

現代日本を代表する世界的作家、村上春樹さん。

今回はそんな村上春樹さんの小説を読んだことのない方に向けて、おすすめの一冊目と二冊目以降のガイドをご紹介しました!

流れを辿って読むことで、楽しめる村上春樹さんの世界。
一度ハマると次々に読みたくなる、中毒性があります。

世界中で読まれていて、もはや日本人としての教養とさえいえるその作品。
家で過ごせる時間が長い今だからこそ、一歩踏み出して、新しい世界を見てみませんか?

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